Q8-1

Q8-1-s1

両側検定の場合、次のような仮説を立てる。

  • 帰無仮説 (\(H_0\)):選挙で候補者が使う選挙費用は、得票率に影響を与えない。
  • 対立仮説 (\(H_a\)):選挙で候補者が使う選挙費用は、得票率に影響を与える。

Q8-1-s2

片側検定の場合、次のような仮説を立てる。

  • 帰無仮説 (\(H_0\)):選挙で候補者が使う選挙費用は、得票率に影響を与えない。
  • 対立仮説 (\(H_a\)):選挙で候補者が使う選挙費用は、得票率を上げる

Q8-2

この問題における帰無仮説は、「与党の支持率は30%」である。 有意水準\(\alpha \in (0, 0.5)\)で検定する場合を考える。

対立仮説1を使って検定を行う場合、与党の支持率が30%より低いのか高いのかが明示されていないので、両側検定を行うことになる。よって、棄却域は分布の両側に\(\alpha/2\) ずつ取ることになる。検定の臨界値は、下側 \(c_{1L}\) と上側 \(c_{1U}\) の二つできる。標本での支持率が25%(\(<\) 30%) であることがわかっているので、検定に使うのは下側臨界値 \(c_{1L}\)である。

それに対し、対立仮説2では、与党の支持率が30%よりも低いということが想定されているので、片側検定を使う。このとき、棄却域は分布の左側(値が小さい側)に\(\alpha\)の分だけ用意する。検定の臨界値は\(c_2\) である。

臨界値を比較すると、\(c_{1L} < c_2\) である。すなわち、\(30 - c_{1L} > 30 - c_2\) であり、\(c_2\)のほうが帰無仮説が想定する支持率30%に近い。よって、対立仮説2を使った場合の方が、帰無仮説が棄却されやすくなる。

ただし、対立仮説2を使う場合にも、両側検定を行ってよい。それは、上で述べたように、片側検定では帰無仮説が棄却されやすくなってしまうので、より保守的な検定を行うためである。対立仮説2に対しても両側検定を行うとすると、仮説の棄却されやすさは、どちらの対立仮説を使っても変わらない。

Q8-3

この理論を確かめるためには、以下の仮説を立てることになる。

この帰無仮説を棄却できれば、「経済発展は政治体制の維持に影響しない」を主張することができる。

しかし、この帰無仮説は「影響の大きさ」を1点で示していないので、棄却する対象が無数にある(影響の大きさは\(0.1\)、 影響の大きさは\(0.32\)、影響の大きさは\(-2.8\)\(\dots\))。それらの帰無仮説をすべて棄却することは不可能である。したがって、統計的検定でこの帰無仮説を棄却することはできない。つまり、「影響しない」という理論を統計的検定で確かめることはできない

本書の範囲を超えるが、影響がないことを主張する一つの方法として、ROPE (region of practical equivalence) を使うベイズ統計学の方法がある。興味がある読者は、以下の本を参照されたい。